かつて少年だった、少年たちへ

2021.12.22

まるで野球少年が、そのままメジャーリーガーになったみたい…
 
日本のみならず本場アメリカからも、そんな感嘆の声が聞こえてくる。
 
先の見えないコロナ禍にあって、海の向こうから毎朝届く彼の活躍に元気をもらった人も多かったのではないでしょうか。もちろん、今年の流行語大賞は「リアル二刀流」であります。
 
アニメのヒーローみたい、なんて声もあるけど、彼はもはやそんな枠さえ超えている。星飛雄馬だって、オールスターのホームラン競争には出場できなかったわけで。しかも、大リーグの。
 
かつては僕も野球少年だった。同世代なら、たいがいはそうだったんじゃないか。野球少年か、あるいはサッカー少年か。スーパーカー小僧もいただろう。
 
そんな少年たちも年齢を重ねるにつれ、もっと夢中になれる対象と出会ったりしながら、身の丈を知り、身の程をわきまえつつ、それぞれに成長していくものだ。
 
将来の目標を「ドラフト1位で8球団から指名される選手になること」とノートに書き記し、それを達成するために努力を重ねた男の子は、まさに野球少年のままメジャーリーガーになった。
 
ちなみに僕も、小学校の卒業文集には「プロ野球選手になりたい」と書いた。なのに同じ夢を描きながら、なぜかこちらはクルマ馬鹿になってしまった。その違いは、いったい…

少年は、思い描いた夢をあきらめた時に、たぶん少年ではなくなる。
 
もう大人なのだから夢ばかり追いかけてないで、なんて。身の丈も身の程も、こんなもんだと自分で決めつけながら。
 
かつては少年(あるいは少女)だったオジサン(あるいはオバサン)が、もしもあの頃に戻りたい、若返りたい、と望むなら方法は、ひとつ。
 
もう一度、夢をみればいい。
 
今こそ、夢の大人買いである。
 
かつて夢みたスポーツカーを、今こそ手に入れよう。かつて憧れたレーサーみたいに、サーキットでぶっ飛ばそう。今さら、なんて言葉は少年の辞書には載っていなかったはず。
 
かつて夢みたオープンカーを、今こそ手に入れよう。かつて観た映画のように落ち葉の舞う道を走り抜けよう。歳を重ねた今なら、そんなシーンもきっと似合うはず。
 
かつて夢みた自由な旅に、今こそクルマで出発しよう。大人たちに大事なのは経済をまわすことかもしれないが、クルマ旅で回すのは、いつだってタイヤとステアリングだ。
 
夢はバックミラーの彼方ではなく、フロントウインドウの、その先に広がっている。
 
さすがに大リーグに挑戦というわけにはいかないけれど、大人と少年の二刀流なら僕らにだって可能なはずさ。
 
今こそ、と夢をみさえすればいいのだから、リアルに。

この記事を書いたライター

夢野忠則

自他ともに認めるクルマ馬鹿であり、「座右の銘は、夢のタダ乗り」と語る謎のエッセイスト兼自動車ロマン文筆家。

現在の愛車は手に入れたばかりのジムニーシエラと、トライアンフ・ボンネビルT120、ベスパET3 125。

   

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