サービスエリアで、真夜中のルンバ!

2018.09.18

ロングドライブに欠かせない曲がある。

運転に疲れたら、眠たくなったら、気分を変えたくなったら、高速道路のサービスエリアやパーキングエリアにクルマを入れて、その曲を聴く。

ロングドライブのたびにその曲を聴くようになって、どれくらい経つだろう。気がつけば、もうずいぶん長い間、季節を問わず、特に真夜中のサービスエリアでそれを聴いている。たぶん、僕だけではないはずだ。日本中のSAやPAで、今この瞬間にもきっと誰かがその曲を聴いている。誰もが聴いてはいるけれど、けっしてヒットチャートに上がることはない、その名曲は……

コーヒー自販機の「コーヒールンバ」。

全国のSAとPAを合わせると、全部で800箇所以上になるらしい。高速道路上で約50kmを目安に設置されているのがサービスエリアで、約15kmを目安に設置されているのがパーキングエリア(地域によって間隔は異なる場合がある)。最近は「ハイウェイオアシス」という施設も増えてきたが、こちらは高速道路のSAやPAに併設されながら一般道路に隣接していて、どちらからも利用可能となっている。

800箇所以上もある全国のSAやPAで、必ずと言っていいほど見かけるのがカップ入りコーヒーの自動販売機で、それにお金を入れて、コーヒーが出来あがるまでの間に流れるのが「コーヒールンバ」である。運転に疲れた時、眠たくなった時、気分を変えたくなった時、あなたも聴いたことがあるでしょう?

そもそも「コーヒールンバ」はベネズエラの楽曲(原題「Moliendo Café」)で、それを国内では1960年代に西田佐知子やザ・ピーナッツがカバーしてヒット、さらに90年代に入って荻野目洋子らが再カバーしたことでリバイバルヒットとなった曲である。が、西田佐知子よりも荻野目洋子よりも、なによりも一年365日、昼夜を問わず、老若男女に関わらず、全国のSAやPAで聴かれているということは、もしかしたら長きにわたって日本でいちばん流れている曲ではなかろうか。

真夜中の、ときには夜明けのサービスエリアで、トイレに行って顔を洗い、肩をポキポキと鳴らしたりして、それから誰もいない自販機コーナーに向かい、ポケットから小銭を出して、選んだコーヒーのボタンを押すと、コーヒールンバが流れ始める。

運転に疲れ、孤独な旅に少しセンチメンタルな気分だったりする時に、ひと気のない自販機コーナーに響く陽気なリズムは、いかにも場違いな気がするし、いちばんふさわしいような気もする。これまで、なんどこの曲を、その場所で聴いたことだろう。

ちなみに、例の自販機で「あなたのためにドリップ中」という表記と共に映し出されるドリップ中の映像は、はたして本当にライブ映像なのか?という疑問を、以前ブログで投げかけたことがある。すると、ある人からコメントが寄せられた。

ある時、あの映像を眺めていると、最後のカップにフタをする時に、そのフタが上手くはまらなかったのです。どうなるのか、と思っていたら、フタがズレたままのカップが出てきました。だから、あの映像は間違いなくライブ映像です……。

と言われても、そんなラッキーな場面に遭遇したことがなく真偽の確認のしようはないが、その話を聞いて以来、コーヒールンバを聴きながら「フタよ、ズレろ」と念じつつ映像を眺めている。残念ながら今のところ、まだズレたことはない。

コーヒールンバを聴きたくてドライブするわけではない。だけど、いつでもそこに在ってドライバーを迎え癒してくれる。高速道路のサービスエリアとは、そういう場所なのだ。

この記事を書いたライター

夢野忠則

自他ともに認めるクルマ馬鹿であり、「座右の銘は、夢のタダ乗り」と語る謎のエッセイスト兼自動車ロマン文筆家。愛車は一万円で買った90年式のVWゴルフ2と、数台のヴィンテージバイク(自転車)



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