タイヤプランナーの独り言(スタッドレス担当者:続編) ~駆動方式と小石の量~

前回、スタッドレスタイヤのプランナーがタイヤを保管する前にすること、という独り言をアップしましたが、その続編です。またマニアックなお話ですが。。。
2020.06.16

5月25日、緊急事態宣言が解除になった。
いきなり全開で元通りの生活には戻れないけれど、新しい生活様式を考えながら、大好きなクルマを引き続きマニアックな目線で楽しんでいきたい!

さて、今年はサクラを遠めに愛でた後、新緑が芽吹いた風景に目を奪われ、晴天ともなれば紫外線の威力を肌で感じる季節になってきた。
すると、夏が過ぎ、気が付けば秋になり、「ヤバ! スタッドレスタイヤのままだった!!
でも、もう少し頑張れば冬だし、このままでいいや。。。」

こんなリズムは改めて、タイヤに関しても新しい生活様式に切り替えよう!
僕たちの冬季の安全を足元から支えてくれたスタッドレスタイヤ。春、夏、秋とたっぷり休養を取らせてあげて、次の冬にはまた元気に僕らをサポートしてもらうために!!

駆動方式と小石の量

スポーツカー、セダン、コンパクト、ミニバンにSUV。様々なクルマを乗り継いでみると、クルマの駆動方式によってサイプに挟まる小石の量が違うことに気がついた。
前回は、スタッドレスタイヤを労わる方法として、サイプの小石取りを紹介。
最も小石が挟まるのは、コンパクトカーやミニバンに多いFF(フロントエンジン/フロント駆動)車両のリヤタイヤであることをお伝えした。それでは、他の駆動方式はどうなのか!?

前回記事はこちら

スポーツカーやセダンに多い駆動方式「FR(フロントエンジン/リヤ駆動)」。
駆動は後輪が担い、重量物のエンジンがボンネット下に搭載されるため、転舵操作を受け持つフロントタイヤに荷重がかかり、路面に押しつけられる。

ハンドル通じて感じ取れるグリップ感によって、素直な旋回フィーリングを得られることがFRの大きなメリットのひとつ。

スタッドレスタイヤを装着した冬季走行時には、滑りやすい路面でも安心感を持ってクルマの進む方向を決め、アクセルを開けながらリヤタイヤの挙動に神経を集中させる。
クルマ好きにとってはたまらない瞬間!

そして冬を終え、スタッドレスタイヤをマジマジと観察してみると・・・・・・。
FFのフロントタイヤにはほとんど小石が挟まっていなかったのに、FRではとても多い。
左右に曲がる際にはタイヤのブロックが変形し、溝やサイプに入り込んだ小石は外に飛び出す機会を得ることができる。これはFFと変わらない。

しかし、FRの駆動はリヤで担うため、フロントタイヤに急激なトルクが加わることは無く、小石を外に放り出す力は弱い。

つまり、FFに比べるとFRの前輪は小石が挟まる量がとても多くなる。対してFRのリヤタイヤ。フロントタイヤが蹴り上げた小石を後輪がキャッチしても、強大な駆動力で外に吐き出してしまう。加えて、フロントに比べてFRのリヤタイヤは幅が広く、主溝の幅も広いので小石はほとんど吐き出されることになる。

結果として、サイプの奥深くに入り込んでしまった微細な小石だけが、駆動によって与えられる遠心力に耐えて残ってしまう。

変態目線で言うと、FR車両のフロントタイヤは小石取りのスッキリ感を存分に楽しめ、リヤタイヤはサイプの奥底にマイナスドライバーをグリグリと捻じ込んで掘り起こす宝探しのような快感を味わえる! 

ちなみに、サイプへの小石の挟まりが最も少ない駆動方式は4WD(4ホイールドライブ/四輪駆動)。フロントタイヤは旋回と駆動力の両方が与えられるので、FFと同様に小石の挟まりは非常に少ない。さらに、リヤタイヤにも駆動力が伝えられるのでFRと同様にサイプの奥底に入り込んだ微細な小石が残る程度。

変態の目線で言うと、最も小石取りのやり甲斐が少なく、つまらない駆動方式なのだ。。。

けれども、スタッドレスタイヤにとっては最良の駆動方式。
滑りやすい路面でも4輪が駆動力を分散してくれるので、余程の悪条件でなければスタック(タイヤが空転して動けなくなる)することは無い。

タイヤの摩耗においても、4WDはとても綺麗に減っていく。
FRのリヤタイヤはフロントに比べて摩耗が早く、FFのフロントタイヤはリヤに比べて摩耗が早い。対して4WDは、車両前部に重量物のエンジンが搭載されているので、フロントタイヤの摩耗の進行は若干早いけれど、他の駆動方式に比べれば4輪の摩耗はほぼ均等に進行する。とは言え、どんな駆動方式でもスタッドレスタイヤを次のシーズンに装着する際には、摩耗を均等に進行させるためにローテーション(タイヤの位置交換)を行うことがとても有効。

保管前にはマーキングを

スタッドレスタイヤからサマータイヤへ交換する際には、次回装着時のローテーションを考えて、養生テープでマーキングをしておくと良い。

例えば「FR(フロント/ライト:前右)」「FL(フロント/レフト:前左)」「RR(リヤ/ライト:後右)」「RL(リヤ/レフト:後左)」等、自分がわかりやすい文字を油性ペンで養生テープに記入後、各ホイールに貼り付ける。

次の冬には、駆動方式やタイヤパターンによって、それぞれローテーションのやり方が異なるので、下記を参考にぜひトライしてみて欲しい。

ローテーションの解説ページはこちらです

スタッドレスタイヤの高性能を永く、最後まで使い切って欲しいから、小石を取り除いた後には、次の冬にまた活躍してもらうように、ローテーションも意識した保管がオススメ。
ここまでやってくれたら、スタッドレスタイヤは安心して休養に入れます!!

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