クルマの冬支度は、冬ドライブの旅支度!

いつでも!だれとでも!どこへでも!それが、クルマならではの大きな魅力のひとつだろう。電車では「いつでも」というわけにはいかないし、オートバイでは「だれとでも」とはいかないし、自転車では「どこへでも」というわけにもいかない。
2018.12.13

いつでも! だれとでも! どこへでも!

それが、クルマならではの大きな魅力のひとつだろう。電車では「いつでも」というわけにはいかないし、オートバイでは「だれとでも」とはいかないし、自転車では「どこへでも」というわけにもいかない。

クルマなら、真夜中に急に思い立って海を見に行くこともできるし、家族みんなで遊園地に向かうこともできるし、その気になれば地の果てまでも行くことだってできる(たまに自転車で行く人もいらっしゃるけど)。それに、電車で「風景がきれいだから、ちょっと停まって」と車掌さんにお願いするわけにはいかないでしょう?

クルマほど自由な乗りものはない。

が、しかし冬になると、そんなクルマならではの魅力が危うくなる場合がある。特に都会に暮らす人たちにとって。突然の雪である。自由なはずのクルマなのに、道に雪が積もった途端に都会人は身動きがとれなくなる。

ずいぶん前のことだが、夜明け前にクルマで軽井沢に向かったことがある。東京にはまだ冬の気配さえなかったのに、高速道路を下りると雪がちらついている。まぁ、これくらいなら大丈夫だろう、と判断するのが都会に暮らす者の甘いところで、早朝の碓氷峠は上っていくほどにうっすらと雪が積もっている。

それでも、まだ、これくらいなら、と上り続けてしまうのが九州で雪道を知らずに育った者の浅はかなところで、峠の中腹あたりまでたどり着いた時には、タイヤが滑ってにっちもさっちも行かず……

そうした事態に遭遇する可能性に思い至らなかった九州育ちで都会暮らしの男は、雪の上に残った自らのタイヤの跡をたどりながら、そろりそろりと、そのままバックで坂道を引き返したのでした。平日の早朝でクルマの往来がなくて助かったけど、あの時の不安と情けなさは今でも忘れられない。

屈辱の原因は判断の甘さであり、つまりは経験不足によるものだ。地元の人なら、たぶんそんな羽目には陥らない。慣れているから。都会に雪が積もるたびにクルマが立ち往生する理由は、まさにそういうことだろう。

とはいえ、雪国に暮らしているわけではないから経験不足はどうしようもない。となると不慣れな者に必要なのは、そうした事態に対する備え、ということになる。たまにしか降らない雪かもしれないが、いつ降るかわからない雪である。雪道は僕らが思っているよりも早く、あっという間にできあがることを碓氷峠が教えてくれた。

最近では積雪や凍結した路面に強いだけでなく、雨に濡れた路面に対する性能や静粛性、低燃費にも配慮したスタッドレスタイヤがラインナップされているから、タイヤを履きかえたからといって快適性が損なわれることもない。いつでも、どこでも走りまわれるように、早めにスタッドレスタイヤに交換しておきたいものだ。

クルマの冬支度は、冬ドライブの旅支度でもある。雪が降ってから、では遅い。長いトンネルを抜けると雪国であった…… 山に向かう冬ドライブの途中には、有名な小説の冒頭のようなシーンに遭遇することが、きっとある。そんな時にも、どうか慌てなくてすむように。トンネルを後戻りはできません。

冬でも、というより冬だからこそのドライブを楽しみたい。いつでも! だれとでも! どこへでも!夏でも冬でも、四季折々にクルマの魅力を満喫しよう。

ほら、「私をスキーに連れてって!」と、今では奥さんとなったあの頃のカノジョが、となりで目を輝かせていらっしゃる。

この記事を書いたライター

夢野忠則

自他ともに認めるクルマ馬鹿であり、「座右の銘は、夢のタダ乗り」と語る謎のエッセイスト兼自動車ロマン文筆家。 現在の愛車はGT仕様のトヨタPROBOX(5MT)と、普通自動二輪免許取得と同時に手に入れたハスクバーナSVARTPILEN401、ベスパPX150。


カテゴリ

横浜ゴム株式会社
あなたにおすすめの記事