
クルマは、時代を映し出す鏡でもある。
だから過去の自動車雑誌のページを開けば、その時代の空気や気分みたいなものが印刷のインクの匂いとともに立ちのぼり、まるでタイムスリップでもしたかのようで楽しい。
手元に、昭和42年1月発行の「モーターファン」(三栄書房)がある。
時は高度経済成長期の真っ只中、わが国もいよいよマイカー時代の幕開け。
某自動車メーカーの広告では、「5年後には、15人に1人がオーナードライバーになるだろう」と高らかに謳われている。誰もがクルマに夢を描いた、そんな時代……。
表紙は、前年の秋に発表されたばかりのトヨタ・カローラで、そのナンバープレートの数字は「1100」。
国産各メーカーがしのぎを削る1000ccクラスの大衆車市場に、トヨタが満を持して投入したカローラ(1100cc)のキャッチフレーズは「プラス100ccの余裕」…… そんな時代。
「第8回東京オートショウ」のレポート記事は、まるでアメ車祭りのようだ。
国産車が100ccの差に一喜一憂している一方で、あちらは7000ccのキャデラックに、5400ccのコルベット……。オイルショック前の、巨大なアメ車が世界を席巻していた華やかりし頃…… そんな時代。
ジェット型ヘルメットの広告が並んでいたりして、当時のモータースポーツ(街道レーサー?)の人気の高さがうかがえる。
純正部品などパーツ類の広告も多い。自分でパーツを取り寄せて愛車を整備する人も多かったのだろう…… そんな時代。
タイヤメーカーの広告を見ると、各社とも乗用車の高速化を見据えて、安全性能やコーナリング性能の高さをアピールしている…… そんな時代。
……ではあるけれど、タイヤに関しては、その大切な基本性能の本質は、昔も今も不変なのではないかという気もする。
もちろん、環境の変化にきめ細かく対応しながら、時代と共に進化しつつである。
当時のヨコハマタイヤの広告を読む……。
『道路がいかに発達し、自動車がどんなに高性能化しても、ドライバーと道路を結びつけるものはタイヤしかありません。安全で、丈夫で、乗心地よい…… ヨコハマタイヤ』(抜粋)
タイヤは、いつの時代もドライバーと道路を結び、ドライブの感動を人々に伝え続けてきた。丸い姿で一徹に、この国のモータリゼーションを支えてきたのだ。
クルマがガソリンで走ろうと電気で走ろうと、これからもタイヤが叶えてくれる夢は変わらない。そのことを半世紀以上も前の自動車雑誌が教えてくれた。
人と道を結び、クルマに乗る人を笑顔にすること。
広告ページの隅で、ヨコハマタイヤの懐かしいキャラクターが笑っている。タイヤが人の笑顔になっているこのキャラクターの名は「スマイレージ」と言った。
Smile&Mileage…… これからも、ドライブが笑顔でありますように。

この記事を書いたライター

自他ともに認めるクルマ馬鹿であり、「座右の銘は、
現在の愛車は手に入れたばかりのジムニーシエラと、