第三者意見

川北 秀人氏

IIHOE
〈人と組織と地球のための国際研究所〉
代表者 兼 ソシオ・マネジメント編集発行人

川北 秀人

IIHOE : 「地球上のすべての生命にとって、民主的で調和的な発展のために」を目的に1994年に設立されたNPO。主な活動は市民団体・社会事業家のマネジメント支援だが、大手企業のCSR支援も多く手がける。

http://blog.canpan.info/iihoe/(日本語のみ)

当意見は、本レポートの記載内容、および同社の原料調達、環境、人事、総務の各担当者へのヒアリング、および長野工場での現場視察に基づいて執筆しています。
同社のCSRへの取り組みは、トップ・マネジメント層の明確かつ具体的なコミットメントがさらに求められる段階と言えます。

高く評価すべき点

  • 生物多様性の保全について、「YOKOHAMA千年の杜」プロジェクトが開始から11年間で、生物多様性の維持・改善に配慮した植樹を国内外で52万本以上行うとともに、その苗木の栽培も自社内で行い、国内では17年度は40,046本(66%)を社内供給するとともに、自治体や他社にも累計で32万本以上提供していること。海外でもタイや中国をはじめとする各国の拠点で、苗木の栽培から植樹までが体系的に行われていること。森林生態系や緑地の維持・改善のための社会貢献プログラムとして、世界最高の水準にあると高く評価するとともに、今後は、「YOKOHAMA千年の杜プロジェクト」サイトが、同様の取り組みを進める他社の事例も多言語で網羅的に紹介するポータルサイトへと進化することも、引き続き期待します。

取り組みの進捗を評価しつつ、さらなる努力を求めたい点

  • 長野工場における環境・社会関連の取り組みについて、各職場が実践する危険予知訓練を横断的に共有する機会が設けられていることを評価しつつ、今後は、環境負荷削減や製造技術の改善についても、従業員からの提案を積極的に引き出す施策と環境づくりが進むことを期待します。
  • 環境負荷の削減について、同社が定める基準に基づく環境貢献製品供給率が2018年3月までに100%を達成し、タイヤにおいて再生ゴムの使用率が2.3%に向上したことを評価しつつ、温室効果ガス(GHG)排出量について、日本政府が掲げる2030年までの26%削減(13年比)を早期に達成するために、加硫工程の環境負荷を下げうる技術の開発への参画、「生産量の変動に適応しうるエネルギー使用の非固定化」(エネルギーのジャストインタイム)化、顧客の使用段階における省エネルギー効果のさらなる拡大など、課題と手法の可視化を徹底的に進めることを、引き続き強く期待します。
  • 働き続けやすさの向上について、育児・介護のための休暇・休職・短時間・フレックス勤務制度の利用者が横浜ゴム(株)従業員の6.60%に達したこと、介護に関してセミナー開催が継続され、従業員アンケートが実施されたことを評価しつつ、「休みながら働き続けられる」環境の確立に、引き続き強く期待します。メンタル面でのケアについても、活用と効果的な対策が進むことを、引き続き期待します。
  • グローバル企業としての人的ポートフォリオの拡充について、海外現地法人から任命された執行役員が加わったことを評価しつつ、今後も、2020年代の世界市場におけるポジショニングとビジネスモデルを見据えた長期的な目標と戦略に基づき、本社の次世代の経営層ポストをグローバルに明示するとともに、その育成が加速されることを強く期待します。
  • 障がいを持つ従業員の雇用について、雇用率が国内グループで2.18%に達し、雇用条件や職務領域の拡充が進められていることを評価しつつ、今後は、販売会社などとも連携し、障がいを持つ従業員の勤続年数をより長期化するための施策がさらに積極的に行われることに、引き続き期待します。
  • 従業員の安全について、昨年度に海外拠点で重大事故が続いたことを契機とした対策が進められつつあることを評価しつつ、その実効性を高めるために、設備や体制・制度の改善にとどまらない現場レベルにおける日常的な取り組み(現場安全マネジメント)と、生産をはじめとする業務の在り方や、それを担う従業員の構成を見通しした中長期的な方針・環境の整備(安全ガバナンス)の両面を拡充し、労働改善の進捗の詳細な報告を、引き続き求めます。
  • 調達先におけるCSRの推進について、CSR調達ガイドラインと同チェックリストにもとづく調達先対象のCSR勉強会開催を継続し、調達先による自主診断や同社調達担当者による現地調査などの結果を取引先にもフィードバックし、表彰する制度が設けられていること、また、ゴム生産農園の調査とともに、タイのゴム生産農家においてアグロフォレストリーの導入・推進を支援していることを評価しつつ、今後は、調達先による取り組みの改善をさらに効果的に促すために、ガイドラインやチェックリストの項目や取り組み状況評価の詳細化と、事例の共有に向けて交流する体制が整えられることを、引き続き期待します。

一層の努力を求めたい点

  • コーポレート・ガバナンスとCSR推進体制について、SDGsを参照していることを評価しつつ、昨年度までのように、ISO26000の中核課題を参照して重要成果指標(KPI)を設ける形式でないこと、また、「未来への思いやり」によって社会と自社の未来の持続可能性の向上にもたらされる効果(価値創出ストーリー)が不明確であることを憂慮します。数年来指摘し続けているように、なぜ、どのように、CSRに取り組む必要があるのかを、トップ・マネジメントが自らの言葉で、明確かつ具体的に述べ、日常のマネジメントにおける進捗管理を求めるとともに、各事業部門の企画担当の主導により、2020年代の世界市場における自社のポジションやビジネスモデルの進化を具体的に想定した戦略と体制の整備が進むことを、引き続き強く期待します。
  • 報告やコミュニケーションについても、国内外の主要拠点・会社の取り組みが個別に紹介されていることを評価しつつ、重要な拠点・地域においてNPOなどとの継続的な対話の機会が設けられておらず、また、本書をはじめとする報告書の発行が期末から半年以上を経ており、「すべてのステークホルダーから『ゆるぎない信頼』を得ている」状況を確立するために、ISO26000が求めるステークホルダー・エンゲージメントが促され、非財務情報の開示が適時に行われることを、引き続き強く期待します。
パク・スックチャ(Joanna Sook JaPark)

アパショナータ.Inc.
代表&コンサルタント

Joanna Sook JaPark

アパショナータ:ワークライフバランスとダイバーシティを推進するために2000年に設立。無意識の偏見・ダイバーシティ(多様性)・テレワーク(在宅勤務)など、多くの企業の人材活用や意識改革を支援している。

当意見は、本レポートの記載内容、同社の人事、女性活躍推進タスクの各担当者へのヒアリング、およびヨコハマタイヤフィリピンでの現場視察に基づいて執筆しています。

同社のCSRの取り組みはCSRスローガン「未来への思いやり」の元、従業員、顧客、取引先、地域、環境等、さまざまなステークホルダーと連携し、価値創造を行っているが、今後も「横浜ゴムらしさ」を実践しつつ、次の100年も事業の発展と社会貢献の両輪の展開に期待したい。

誰もが働きやすい職場環境づくり

女性活躍推進タスク」は面談などを通して直接当事者たちの声を聞くことにより的確にニーズを把握した。それに基づき在宅勤務やキャリアリターン等のニーズに見合った制度等を導入したことは、女性社員の離職率低下につながるだろう。今後は定着した女性達がやりがいのある仕事を担いながら能力発揮ができる施策を期待します。
ヨコハマピアサポートは2012年の設立から障がい者を定期的に採用し、障がい者雇用率は法定を上回る。また、人材育成と意欲を高める評価制度の見直しや定期的な個別面談は障がい者が安心して仕事を担える環境を提供している。今後はヨコハマピアサポート以外でも可能な範囲で障がい者に働いてもらう事で、一般社員の多様な人材への理解や交流を深めることができるだろう。

教育訓練

CSRのテーマはさまざまな人事研修に組み込まれ、継続的な啓発がなされている。また、取引先と共にCSRに関する勉強会を開催することで、共通認識と良好関係を深めている。
また、地域の安全に向け、盲学校と合同防災訓練を継続的に実施し、教職員向けの避難器具等の取り扱いを教え、目の見えない人たちの避難誘導の配慮を学ぶなど、協力しながら取り組んでいる。

ヨコハマタイヤフィリピン

今年創立22年を迎えたYTPIは、地域密着型での雇用と社会貢献を続けている。地域の自治体や学校などと連携して取り組んでいることが特徴的で、地域と共に成長してきたことが伺える。

社員に対して

契約社員を多く雇う地域の他社と比べ正社員雇用が多い。社員の健康と安全に向けては万全な医療体制を整えており、24時間体制の工場内クリニックを運営、救急車も保有し、常に急な事故や病気にも対応可能だ。また、薬物依存根絶にむけてのドラッグ検査を含む、多種類の健康診断、家族も対象とした手厚い医療保険、無料予防接種、薬代補助等、充実した医療制度を提供している。
社員の意欲を高める優秀社員の表彰式、職場対抗のスポーツフェスティバル、毎月の誕生日祝い会等、多くの会社イベントを実施。また家族参加型のファミリーデイやクリスマスパーティは社員満足度のみならず、家族満足度向上にも寄与し、それらの成果はクラーク地区平均の企業離職率15%に比べ8%という低い離職率に表れている。
社員の多くは生産現場、技術で働く男性(94%)だが、総務・事務的仕事は女性が多く、全社員の女性社員比率(6%)に比べ、女性管理職率(30%)が高い。また、ボードメンバーでは7人中ローカル3人(43%)女性2人(29%) と、多様な人材が活躍できる職場環境が整っていることが見受けられる、リーダ―シップの多様性は日本本社が学べるところだろう。

地域に対して

22年の歴史の中で、最も長く継続して取り組んでいるのは、地域の栄養不足の児童に対しての給食プログラムだ。実施後は健康状態が改善し、子どもたちの健康促進に貢献している。
教育はYTPI のCSR活動で最も力を入れているテーマのひとつである。2011年より優秀だが経済的に厳しい学生に向けての教育援助として奨学金プログラムを開始。今年は4大学19名の学生に奨学金授与し、地域の人材育成をサポートしている。卒業後の採用は義務付けていないが、現在までに52名の奨学生を輩出し、12名の卒業生が入社した。
さて、昨年に発生した火災は、17年度のタイヤ生産量に16%減をもたらした。工場では2018年9月には生産が開始できるよう復旧作業が続いており、完全復帰は2020年3月末の予定。今回の火災の教訓として、毎月14日を防災の日とし、各部ごとに消火訓練、3か月に一度、工場内での避難訓練を実施し、社員の安全と災害防止に努めている。
CSRスローガン「未来への思いやり」が2017年に制定されたが、地域、社員、環境への「思いやり」の実践がすでに感じられるYTPIの取り組みであった。

第三者意見をいただいて
執行役員 CSR本部長 近藤 成俊

当社の取り組みに対し、ご評価頂いた点はさらに深化を図り、ご指摘頂いた点については真摯に受け止め改善に努めてまいります。
当社グループは、グループ全社で安全総点検、設備改善および安全啓発活動に注力しておりますが、今後も一層の深化を続けてまいります。また、多様な環境の方々が健康・健全に長く働いて行ける職場環境の整備をグループ共通の課題として継続して推進して行きます。「教育の杜」などの活動を通じて、より一層地域社会との交流を深めて行きたいと思います。
次の100年に向けた持続可能な成長を目指す中期経営計画GD2020の実行において、CSRスローガン「未来への思いやり」のもと、コーポレートガバナンスを一層強化し、社会からの信頼をより強固なものにしていきたいと思います。

執行役員 CSR本部長 近藤 成俊