ラジアルタイヤ開発

タイヤのラジアルタイヤ化(1950年代後半~60年代前半)

1960年代を代表するタイヤの技術革新は「ラジアル化」でした。従来のタイヤの構造そのものを一新したラジアルタイヤは、「安定性に優れる」「走行抵抗が少ない」「耐摩耗性が良好」「低燃費」といった数々の利点をもち、タイヤ技術史上に一大変革をもたらしました。

日本におけるラジアルタイヤの歴史は、1956年に横浜ゴムが他社に先駆けトラック・バス用のワイヤーラジアルタイヤを開発したことから始まりました(1963年、国産第1号のラジアルタイヤとして発売)。さらに、横浜ゴムは乗用車用ラジアルタイヤの開発を開始し、1964年には偏平プロファイルモールドによる試作に成功しました。

ラジアルタイヤの商品化に立ちはだかった壁

ラジアルタイヤの商品化にあたっては、成形機などの生産設備や生産技術、材料を従来のバイアスタイヤ用から一新する必要がありました。また、欧州で一般的になっていたスチールラジアルタイヤでは、金属(スチールコード)とゴムとの接着性の問題、特に接着の疲労抵抗面で技術的な不安がありました。

生産面に加え販売面でも大きな課題がありました。ラジアルタイヤは生産コストが割高になるため販売価格がバイアスタイヤより高くなることから、自動車メーカーはラジアルタイヤを新車に導入したがりませんでした。立ちはだかるさまざまな壁を前に、各タイヤメーカーがラジアルタイヤの商品化に躊躇する中、横浜ゴムの挑戦は続きました。

ラジアルタイヤ時代の先駆け(1960年代後半)

横浜ゴムは高速道路時代の到来を予期し、高速と安全を両立できるラジアルタイヤの開発が社会的使命になることを確信。1966年、他メーカーに先駆け日本のラジアルタイヤ時代を切り拓く第1号として「G.T.SPECIAL」を発売しました(一般高速用「G.T.SPECIAL」、スポーツ走行用「G.T.SPECIAL XX」の2種類)。

1971年 日本初の乗用車用スチールラジアルチューブレスタイヤ 「G.T.スペシャル・スチール」発売

1967年から「G.T.SPECIAL」の輸出を開始すると欧州でも好評を博し、国内外でたちまちラジアルタイヤブームに。国内の競合他社も追従しましたが、ラジアルタイヤにおける横浜ゴムのシェアは30%以上となり、しばらくは注文に生産が追いつかない状況が続きました。横浜ゴムの先駆けの精神と挑戦し続ける姿勢が、新たなモータリゼーションの幕を開けたのです。