ニュースレター

2018年6月26日

MB事業、主要製品の歴史

横浜ゴムは創立以来、タイヤ以外にも工業用/自動車用ホース、コンベヤベルトなどの産業用製品、空気式防舷材/マリンホースなどの海洋商品、シーリング材/接着剤、航空機部品など多様な製品を手掛けてきた。1988年、当社はこれら製品をMB(マルチプル・ビジネス)事業の下に統合し、現在「ホース配管」、「工業資材」、「ハマタイト※・電材」、「航空部品」の4つの事業部に区分して展開している。MB事業の主要製品の歴史を現在の事業区分に沿って振り返る。
※「ハマタイト」は横浜ゴムの接着剤、シーリング材、コーティング材のブランド名。

*横浜ゴムは昨年10月13日に創立100周年を迎えました。この機会を捉え、本ニュースレターでは当社の歴史的エポックとなった事業、製品などを紹介しています。

ホース配管

【主な製品】油圧機械用高圧ホース、自動車用ホース、水素ガス用ホース、金属継手、カップリング(流体継手)など

出発点は航空機用ホース

油や薬品向けのゴムホースは、横浜ゴム創立当時から製造してきた製品のひとつだが、現在の主力製品は油圧機械用高圧ホースになっている。横浜ゴムが油圧機械用高圧ホース事業に乗り出したのは、1955年に米国エイロクイップと技術提携したことから始まった。当初の目的は航空機用テフロンホースの製造だったが、同ホースがワイヤーを補強材に用いた耐圧性に優れた金属継手付きホースであり、かつ着脱が容易なカップリング(流体継手)を使用することから、他の産業分野への応用を模索した。

高圧ホースが使用される建設機械高圧ホースが使用される建設機械

油圧機器の急増で販売を伸ばす

折から日本は1960年代の高度経済成長期を迎え、自動化、省力化を背景に建設機械、産業機械など油圧機械の需要が急増しつつあった。油圧機械は動作制御のため高圧ホースが数多く使われる。こうした需要増を見込んだ横浜ゴムは、1959年にセルフシーリングカップリングの国産化を図った。続いて1964年に耐油性合成ゴムにワイヤー補強層をスパイラル(らせん状)に編み上げたスパイラルホース、1967年にホース寿命に影響するサージ圧力(衝撃圧力)を使用目的別に高めたサージ・シリーズを発売するなどして販売を伸ばしていった。

各種高圧ホース各種高圧ホース

専門工場を建設、海外にも進出

事業拡大に伴い、1973年にエイロクイップと合弁で金属継手の製造、ホースと金属継手のアッセンブリーを行う合弁子会社を設立(1996年に合弁を解消、2004年に横浜ゴムに吸収合併)。同時に高圧ホースの生産力強化のため1974年に高圧ホース専門工場として茨城県に茨城工場を建設した。その後海外へも進出し、現在では台湾、中国で高圧ホースの生産、タイ、中国でホースと金属金具のアッセンブリーを行うようになっている。

高圧ホース専門工場として建設された茨城工場(1974年)高圧ホース専門工場として建設された茨城工場(1974年)

自動車用ホースも世界展開

エアコンやパワーステアリングに使われる自動車用ホースも世界展開を図っている。特に北米では、米国にホース生産拠点、アッセンブリー拠点2カ所、それにメキシコを加えた4拠点を展開。ホースと金属継手のアッセンブリーを行う体制を確立しており、米国や日系カーメーカーに幅広く納入している。北米以外でも日本で生産しているほか、日本、タイ、中国でホースと金属継手のアッセンブリーを行っている。

工業資材

【主な製品】コンベヤベルト、空気式防舷材、マリンホース、橋梁用ゴム支承、道路ジョイント、タンク用シール材、産業用空気バネなど

●ベルト

創立当時からの主力製品

繊維などで補強された工業用ゴムベルトは、横浜ゴム創立当時からの主力製品のひとつ。1921年に開発した角耳ベルトは電動機の軸に取り付けられるベルトで、耐久性に優れるため革命的と評価され当時の紡績会社はこぞって従来の皮革ベルトから角耳ベルトに変更した。また1929年に開発したV型ベルトは摩擦力が高く工業機械や自動車などに幅広く使用された。

国内外で需要を伸ばしたコンベヤベルト

戦後に大きく需要を伸ばしたのは鉄鋼、土木、鉱山用などに用いられるコンベヤベルトだった。特に芯材にスチールコードを用いたスチールコード・コンベヤベルトは耐久性に優れるため、過酷な使用環境下で行われる石炭、鉄鉱石などの長距離、大量輸送に最適な製品となった。1963年に日本初のスチールコード・コンベヤベルトを北炭夕張坑、奥多摩鉱業に納入したのを皮切りに、常磐炭鉱(1965年)、豪州マウントニューマン鉱山(1969年)、ニューカレドニアのル・ニッケル鉱山(1969年)など、国内外で数多く採用された。

常磐炭鉱で稼働するスチールコード・コンベヤベルト(1965年)常磐炭鉱で稼働するスチールコード・コンベヤベルト(1965年)

用途・目的に応じて多様な製品を開発

コンベヤベルトは製鉄所、セメント工場、砕石所など様々な場所で使用される。このため用途・目的に応じた多様な製品開発も進めた。高温の焼結鉱などの運搬に耐える耐熱ベルト「ハマヒート・スーパー50」(1967年)、運搬中にベルトの開口部がなく運搬物の飛散を防ぐパイプコンベヤベルト「FLEX LINE」(1991年)、極寒冷地での資源開発に適した耐寒耐衝撃性コンベヤベルト「ICEGUARD AR」(2015年)など様々な製品を開発してきた。

東日本大震災の復興でも活躍

東日本大震災の復興策のひとつとして市街地の高台移転による新しい街づくりが進められている。高台移転の地盤整備の段階で、高台の造成で発生した大量の土を沿岸部などの集積地に搬送するためにコンベヤが必要とされ、横浜ゴムのコンベヤベルトも宮城県東松島市や岩手県陸前高田市などで多数使用された。

●海洋商品

空気式防舷材

空気式防舷材はそもそも鯨に代わる防舷材として1958年に開発された。当時南氷洋捕鯨では、母船と油槽船などの洋上接舷で鯨を防舷材として使用していた。燃料タンクや空気バネの技術を応用して開発した空気式防舷材は、繰り返し使用でき軽量で大型化が可能などの利点を備え、捕鯨船で数多く使用された。その後、世界的な石油資源開発の高まりを背景に大型石油タンカーが増加。空気式防舷材は海上でのタンカー同士の二船体間荷役に最適な防舷材として販売を伸ばし、世界各地に輸出されるようになった。空気式防舷材運用に関するシステム化も進め、係留シミュレーション技術「イーアモス」(2005年)、空気圧モニタリングシステム「FENDER watch」(2006年)、総合モニタリングシステム(2012年)なども開発している。現在、日本、インドネシアで生産している。
※防舷材の紹介動画はこちら https://youtu.be/0dH8Rv6Pl6Q

空気式防舷材空気式防舷材

マリンホース

1960年代前半から生産を開始したマリンホースは、当初国内の石油貯蔵基地などでタンカーから基地への海上輸送などに使用されたが、その後中東諸国などで需要が高まった。産油国の石油積出港は大型タンカーが接岸するのには水深が浅い場合が多く、沖合いに石油輸送専用の固定ブイを設置して石油積出を行っている。マリンホースは石油基地からブイまでの洋上輸送に使用される。マリンホースのタイプはサブマリン(海底設置)、フローティング(海上設置)、浮沈の3タイプがあるが、横浜ゴムではいずれの方式にも対応できる。横浜ゴムはマリンホースを「Seaflex」ブランドで販売しており、現在、日本、イタリア、インドネシアの3カ国で生産している。

マリンホースマリンホース

ハマタイト・電材

【主な製品】建築用シーリング材、ウレタン塗膜防水材、自動車・工業用接着剤、電子機器向けコーティング材/シール材/封止材など

ビルの高層化と共に事業を拡大

ハマタイト・電材事業は、1958年に始まり、日本におけるビルの高層化とともに大きく成長した。日本では1963年、建築基準法の改定で建築物の高さ制限が撤廃され、カーテンウォール工法を用いた高層ビルの建設が相次ぐようになった。カーテンウォール工法とは、鉄骨でビルの骨格を組み上げ、外壁にアルミやコンクリートパネルをはめ込んでいく工法。アルミやコンクリート製の外壁パネルは、四季や昼夜の温度変化、室内外の温度差によって伸縮、そりなどを繰り返すことから、これを調節するためパネルの繋ぎ目に建築用シーリング材を施工する必要があった。

初期のハマタイト生産現場初期のハマタイト生産現場

超高層ビルへの施工が相次ぐ

1963年、横浜ゴムは初の建築用シーリング材としてポリサルファイド系の「SC-500」を発売した。ポリサルファイド系シーリング材は、従来使われていたガラス用パテ(接合剤)や油性コーキング(充填材)を上回る優れた接着性と弾力性を備えていた。「SC-500」は1963年に東京の日本石油本館、1964年にホテルニューオータニ本館に使用された。1974年、建築用シーリング材を月間50トン生産する「50トン作戦」を開始。1975年には、新たに制定された建築用シーリング材の耐久試験JIS A 5757を大手5社中トップで合格した。こうした生産力増強と品質向上を足がかりとして、安田火災海上ビル(1976年)、阪急グランドビル(1977年)、サンシャイン60(1978年)など日本を代表する超高層ビルに相次いで採用された。

六本木ヒルズ森タワーあべのハルカスハマタイトが施工された近年の超高層ビル。上は六本木ヒルズ森タワー(東京都)、下はあべのハルカス(大阪市)

屋上防水、自動車、電気・電子まで幅広く展開

横浜ゴムの接着剤は建築用シーリング材以外の分野でも幅広く使われている。1965年に生産開始したウレタン塗膜防水材「アーバンルーフ」は、ビルの屋上、ベランダ、バルコニーなどでの施工を重ね、ロングセラー商品になっている。1970年に生産開始した自動車用接着剤は窓枠用を中心に販売量を増やし、1987年から米国、1997年からタイ、2004年から中国でも現地生産を開始している。さらに電気・電子分野へも進出を果たし、2009年に電化製品向け接着剤「FLASH ONE」、2012年にLEDパッケージ用シリコーン系封止材、2013年にスマートフォンなどの液晶画面向けブルーライトカットハードコート材などを発売している。

自動車の窓枠LEDパッケージハマタイトは自動車の窓枠(上)の接着、LEDパッケージ(下)の封止材にも使用される

航空部品

【主な製品】ゴム製品(燃料タンク、シール材、制振材、インフレートシール、音響材など)、継手・金属製品(ホース、カップリング、ダクト、チューブ、ベローズなど)、複合材(ハニカムサンドイッチパネル、プリプレグ、浮力材、化粧室ユニット、ウォータータンクなど)

戦前の実績を踏まえ1950年代から再開

日本の航空機産業は、太平洋戦争後7年間にわたる航空機の研究・設計・製造禁止期間を経て、1952年に米軍機の修理を請け負う形で再開された。こうした中、戦前に航空機用タイヤや可とう管などの製造実績があった横浜ゴムは、再度航空部品事業への参入を図るため、1957年から航空自衛隊練習機の補修用燃料タンクなどの生産を開始した。

多様なゴム製品、継手・金属製品を開発

航空部品事業をスタートさせた1950年代から今日に至るまで、航空自衛隊など官需向け製品は、航空部品事業の柱のひとつとなっている。これまで開発してきた主なゴム製品には燃料タンク、キャノピーシール(操縦席の風よけ覆い用シール材)、インフレートシール(気密保持シール)、ソナードーム(ソナー保護カバー)、また、代表的な継手・金属製品にはダクト、チューブ、カップリング、テフロンホース、ベローズ(蛇腹状の配管)などがある。

複合材を中心に民需向けを開拓

一方、民需の開拓も1970年代前半から複合材を足掛かりとして本格化させた。複合材とは横浜ゴムが得意とする接着技術を使い、ゴム、金属、プラスチックを加工して製造する材料や成形品。その代表的製品が1971年に米国アメリカンサイアナミッドと技術提携して製造したアルミハニカムサンドイッチパネルだった。ハニカム(蜂の巣)状に並んだ芯材にアルミ板を接着したパネルで、軽量で剛性が高い特徴を持つ。1975年に新幹線車両床材に採用されて以来500系、700系車両などに採用されたほか、リニアモーターカー(1979年)、台湾新幹線車両(2004年)の床材にも使用された。現在では、複合材は主にガラス、カーボン、ケブラーといった強化繊維との複合材料であるFRP(Fiber Reinforced Plastics、繊維強化プラスチック)として位置づけられ、複合材製品としては航空機用内装パネル、航空機用空調ダクト、レドーム(レーダー用カバー)、燃料タンクなどが生産されている。

ボーイングとの取引拡大

民需市場を大きく伸ばしたのは米国ボーイングとの取引拡大だった。1978年、横浜ゴムのプリプレグ※がボーイングの認証を取得し、日本の機材メーカーに供給され、フェアリング(空気抵抗を減らすため翼に取り付けられる覆い)に加工されボーイングに納入されたのがビジネスの始まりだった(2014年、国立科学博物館がプリプレグを未来技術遺産に登録)。その後、ボーイング757、737用にラバトリーモジュール(化粧室ユニット)、757、737、747、767、777用にウォータータンク(飲料水用タンク)の独占供給契約を結ぶなど取引量を増やしていった。また2000年代に入り、欧州の国際共同航空機メーカーであるエアバスにもウォータータンクやウエストタンク(汚物タンク)を納入した。
※プリプレグとは、ガラス、カーボンなどの強化繊維に予め樹脂を含浸させた複合材成形用の材料。プリプレグを型に積層し、加熱硬化することで、高い強度を有した複合材製品にすることができる。

プリプレグプリプレグラバトリーモジュールラバトリーモジュールウォータータンクウォータータンク